睡眠

睡眠を考える。

 不眠はみなさん本当に悩まれてます。シンプルな問題でありながら解決できなかったり、難しい問題です。これに関しては書かれている本もあるので、そちらをまず参考にしてもらったほうがいいのですが、外来で加療するにあたり私の基本方針を書くこともスムーズな診療にあたるのと、私的な体験ですが、一ヶ月ほどショートスリーパーになった経験もあり、私の考えや最近感じたこともまとめてみます。

  • 外来の基本方針~厚労省の12の指針、etc
  • 睡眠を邪魔するもの、深めるもの
  • タイムマネージメントとしての睡眠の能力
  • 睡眠薬をザックリ解説
  • 睡眠グッズ

外来の基本方針

 まずは厚労省の12の指針です。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html

 日本睡眠学会のガイドラインです。

http://jssr.jp/files/guideline/suiminyaku-guideline.pdf.pdf

 これにそって診療をやっています。

 原疾患の判断、加療

 生活指導、薬物療法、認知行動療法ですね。

 これにくわえ、

2)悪循環がないか?

3)治療反応性がありそうか? 必要性がどのくらいあるのか?

 などを加味します。

 入院加療を受けたひとがクライアントに多く、やや重症例が多いのと、発達特性、思春期特性からの不眠、子どももいるので未完成の睡眠リズムの問題などを取り扱うのがやや特色ですかね。

生活指導

 可能そうであるなら睡眠日記をつけてもらいます。チェックするのは以下の項目です。とはいっても24時間の行動を書いてもらいます。

  1. リズムは保てているのか。特に起床時。
  2. 睡眠時間と中途覚醒。
  3. 日中の体に対する負荷。肉体的負荷、精神的負荷。
  4. 入眠前の行動 入浴、食事、運動、スマホ、テレビ

 リズムを保てているのか?

 体内時計は起床時にリセットされます。何時に寝るのかは朝はじまります。これはメラトニンの仕組みの御陰です。https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html 

 睡眠時間と中途覚醒。

 睡眠時間は基本的にバラバラです。必要な睡眠時間は体と精神の疲労によって決まります。しかし、大まかに三つに分類してます。

  1. バリアブルスリーパー :生活やストレスにあわせて睡眠時間が変わるタイプ
  2. ショートスリーパー :平均より短い睡眠時間で問題ないタイプ
  3. ロングスリーパー :長いタイプの睡眠時間が必要なタイプ

 中途覚醒は、様々な要因でなります。加齢によるものもあってこれは本当に現在はどうしようもないです。https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-004.html

 加齢に伴う変化はなかなか難しいものがあって、それが悪性なのか良性なのかも判断に困ります。満足度が下がっているだけで短期間の観察では問題ないとしかいえない。長期予後に関してもそれほど負えないのでよくわかることもしばらくないのではと思います。生活習慣をかえろといわれても、そんな困りますでしょうし、基本的にはだましだまし悪循環がなければのらりくらりと交わしながら生活の質を下げないことを主眼に指導していきます。睡眠薬でかえって悪化するケースもあって下手すると薬だけ増えることもあり難しいものです。おそらく、身体と精神の回復が一回の睡眠では追いつかないことも要因であると思いますんので、日中の生活指導も行っていきます。ただ、亀の甲より年の功。そんなのらりくらりスタイルで乗り切る方々は多く尊敬できます。

日中の体に対する負荷。肉体的負荷、精神的負荷

 バリアブルスリーパーの場合、日中の負荷で睡眠時間は変わります。つまり天秤のバランスがとにかく睡眠の満足度には大事だと考えています。疲労=睡眠の質×時間 もっと正確に言うと精神疲労=ノンレム睡眠の質×時間 肉体疲労=レム睡眠の質×時間 のバランスなんです。

 熟眠感がないというのは二つにわけられます。精神的にないのと、肉体的にないものです。でもここがやっかいで、うつ病や認知症、強迫性障害があると自動思考にともない精神疲労が積み上がっていきます。自律神経系の失調もあり内臓の疲労ももちろんたまります。コルチゾールの過剰放出が続けばバランスを崩す場合もあるでしょう。この場合、バランスがとれなかったり、精神疲労だけがとれなかったりします。その逆で肉体疲労だけがとれなかったりします。

 ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はGABA系の刺激により睡眠を導入するのですが、浅い睡眠が増えるという特徴があります。つまりレム睡眠を増やし、理屈上は肉体疲労には有効なんです。ところが肝心の精神疲労がとれないという矛盾が起きます。

 じゃあ、短時間型ならいいじゃないと考えると超短時間型は依存のリスクが高くなります。

 私個人の考え方ですが、入院加療を必要とするレベルの利用者さんに対しては、依存性の少ないデエビゴとルネスタを処方することが多いです。それぞれ苦み、悪夢などの問題があります。もちろん、不眠症のスクリーニングができているという条件ですが。入院後は環境の変化リズムの変化にともない眠れないことが多く、苦痛を感じることが多く、副作用のリスクよりもすみやかな入院加療の導入を目的として使用する事が多いですが、説明の上で希望されない方は頓服での対応になりますが印象的には多くの方が希望されます。入院前に不眠があったり転院先ですでに処方されている場合が殆どです。あとはその反応をみたり環境への適応をみたり、して可能なら減量中止をしていきます。

 率直な意見をいわせてもらえば、現在人類は完璧な不眠症対策を持ち合わせていません。その一つが睡眠に対する過度な期待なのではないかと仮説を立てています。

 入眠前の行動 入浴、食事、運動、スマホ、テレビ

 我々が森や草原で寝ていた時のことを考えると、夜は不安で当然だと思います。 親元を離れ一人暮らしして離れてみると眠れなくなったりすることがあると思います。

 ペットや同居者の有無と睡眠の関係は結構データがあってどれも、独り身の人の心をえぐるものとなっています。ただ、同居すれば安心というわけでもなくストレスはそれぞれなんで一概には当然いえません。そういえば、添い寝するだけの男女の友人関係とかありましたね。

夜になると不安が強くなるのはその名残でいわゆる”置き換え”がおきます。名前のない感情は、感情の不協和により不安の理由を探します。すると将来の不安とか、隣に寝ている人への不満不安とかに肉食動物に対する不安が置き換わり、ついテレビをみたりとか、ついお酒をのんだりとか、深夜徘徊をしたりとか、若いカップルだと喧嘩とかしたりするのではないでしょうか?

 昔はテレビが不眠の原因でした。特に発達系の課題があるかたや、不安が強いかたで孤独な方に多かったです。それがスマホにかわり孤独でなくてもついみてしまう自体になってしまいます。

 金庫をつくったり一部屋かぎかけちゃったりすればすむ話ですが、そうもいかないですね。

 多くの場合、寝たいという欲求があればその寝たいという欲求に従って学習が起こり、多くの場合は睡眠リズムが適正になってきます。ところが精神科の利用者さんでなぜこの行動の修正が起きないかというと、様々な理由で不合理な解決をしようとしているのが一面にあります。

 例えば、統合失調症の方ですと、刺激に弱く、音に敏感なので静けさをこのみ次第に夜型の生活になることがあります。これはエビデンスがあるわけではないですが、臨床ではあるあるの一つです。同様に聴覚過敏のある発達障害の方にも同じ傾向があります。

 

 薬物療法

  https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-030.html

 この厚労省のHPの薬にくわえ、眠けが副作用としてあるものを使用します。逆説的なのですが、ベンゾジアゼピン系の薬は不安を停める為の薬でもあるのですが、もともと不安を抱きやすい性格や、他の依存があるかただと、すぐに依存になる印象があります。その場合は処方は慎重にします。しかし、悪循環がある場合にはそうもいってられません。そうやって常に天秤にかけて使用していきます。

 また、20歳~18歳以下(実年齢でなく精神年齢で考えています)の場合もリスクが高く慎重になります。基本は出しません。

 若い方の依存のリスクと比べて高齢の方も独特のリスクがあります。依存の問題は離脱と耐性、金銭的な問題が主なので、寿命まで飲み続けることを考えれば相対的にリスクは減っていきます。しかし、転倒、ふらつきと多剤併用の問題があります。

 睡眠の質の低下を訴えるかたは多く、独特のこだわりがある場合も多いです。中年時期から飲まれていて、高齢期にさしかかり減量を強くすすめるのですが、一度の不眠に耐えられず再開を強く希望するかたも多いです。出さなかったら他の病院に行かれるだけなので原則的には希望にあわせつつリスクを説明し、様々な減量方法を提案していくのですが、自己調整やお酒なども飲んだりしてやはり転んだりされるかたもなかにはいます。

 また、ポリファーマシー(多剤併用療法)は深刻で様々な障害が実際にある場合があるので仕方ないですが、経験上6~10種類の薬を飲まれているかたが精神症状を起こし、薬の整理や、肺炎で内服できなかったことを切っ掛けに精神症状が回復したりしているのを経験し、薬の治験自体が単剤~数個の薬を前提にデザインされており、複数処方による副作用は再現性が難しくエビデンスの収集も難しいことを考えると安易に薬を足していくのはやはり恐怖心があります。

 薬物療法は、利用者さんの希望、リスク、利益を常に天秤にかけながら処方を決定していきます。

道具等を使った睡眠の改善

  睡眠の質の改善は様々なやり方を私も試しました。 別の章では私が睡眠の改善のために使っている道具を紹介します。これは章をあけて別にやっていきます。

  • この記事を書いた人

モジャクマシャギー

 アラフォーの精神科勤務医です。自分の外来や診療が円滑になり、利用者さんの治療がスムーズになることを目標にブログを書き始めました。   ですが、いろんな方にもみてもらってやくにたてたら嬉しいです。  病棟業務を中心に児童から認知症、最近はインターネットゲーム依存まで幅広くみています

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