本を読む

本の探し方

前書き

 認知行動療法や行動活性の宿題で“本屋に行って一冊選ぶ”とか図書館に行って一冊選ぶとかという宿題を出します。わりと楽しい宿題で行動力、思考、興味関心を測り、メタ認知をはかる宿題なんです。

 ところが不安が強い方だと言っても選べないという方も多いです。

外来で話せないけど本は読めると言ったタイプの方に色々アドバイスしたいけど、興味関心が分からず表情のパターン等も隠す方だとこちらも何をアドバイスしたらいいかわからずもどかしいなあという場合に本をまずよんでもらいたくて進めたんですが選べないという話になったんです。

じゃあちょっとかわりに探してみようと思って言ったのですが、大型書店に行ってメンタルヘルス系をみると新刊が本当に多いんですね。専門的なものからエッセイ的なものまで様々でこれは確かにある程度知識がないと選べない考えました。情報が限られた時代からすると贅沢な悩みですが、選択肢が多いと確かに選べないかなとは思います。

 また、本の中にはエビデンスに触れられていないものも多く極論系「〇〇は〇〇で治る」みたいなものもあるのでやはり選び方も大事だと思います。

 あとYouTubeとかにふりまわされている方々もいるので情報の怖さもあり選べないのも何と無くわかります。例えば一部のとある例をあげると

  • 100%安全ではない→わかる。確かに受け入れは怖い。
  • それなのに広めていて陰謀だ→?! そっちは100%なんかい。

みたいな論理の飛び方をしていると、情報って大事だし選べないって気持ちもわかるのでこの部分を記事にしました。

 また、最近流行りのHSPについても概念自体になんら反論はないし昔流行った動物占いや血液型占いのように自己紹介やラベリングの範疇であればぜひぜひと思うのですが、HSPだからうつになったとか幻覚はHSPのせいだといわれると、害にもなりませんが薬にもならない気もするのでそれで苦しむのなら本末転倒だなとも思い情報の取捨選択は大事だと思います。

 また、インフルエンサーの本がもてはやされる風潮もちょっと心配で可能であればわかりやすい専門書もあるのでそちらもみてもらいたいなとも思います。可能であれば沢山触れてもらえた方がいいと思いますが、仕事しながらだったり病を抱えていては難しいだろいというのもあり厳選せざるをえないのはしかたないと思います。

 基本)本を手に取ってみるとこ

 まず、別に治療とは関係のないすべての本に当てはまる部分です。

  1. 著者のプロフィール
  2. 目次
  3. 発行日
  4. 何刷か
  5. エビデンスをどこからとってきているか.明示しているか。参考文献の多さ。

 著者のプロフィール有名大学をでているとかそういうものをみがちですが、基本的にはバックボーンをみます。バックボーンとは考え方のベースになるのもですね。メンタルヘルスなら職業はなにかとか、どんな本を書いてきたかです。

 目次にざっと目を通すとその本の概略がわかります。自分が知りたい知識があるかわかります。

 発行日は巻末の最後のほうに著者や発行者が書いてあるページにまとめてあり、情報の新鮮さがわかります。基本的にエビデンスは引用の論文からなので引用された論文の時期などでもいいと思います。ただ、古くても売れている本はそれなりの意味があるので、新しければいいというわけではありません。最新の情報を知りたいのならそのあたりをみます。同じページに1刷とか書いてあります。1刷あたり500~数万部の目安でだいたいの売れ行きがわかりますが、あくまで目安です。すくなくとも刷数が多い本は人気があると言って間違いないです。版は加筆や修正があれば1版2版といった書き方になります。専門書はニッチで買う読者数も限られているのでこのあたりはあくまで参考です。

 次に巻末に英語でいろいろかかれているものがあります。著者名 論文のタイトル、載った雑誌です。

 これは例えばうつ病に運動がいいと書いている本があるとすると、その実験や、集計解析(症例をあつめて計算したもの)を確認した上で書いていますが、その原本がどこにあるかということです。われわれ医者がエビデンスとよんでいるものでもあります。

 殆どの本ではそれが明示されています。色んな研究があるのでエビデンスがあれば確かというわけではないのですが、健康食品系や、水や壺はここあたりがほぼほぼないし弱いので疑似科学系を見分けることができます。

  疑似科学の多くは、成功者バイアスがベースです。例えばたくさんのがん患者にめざしの頭をネックレスにして首から提げてもらいます。5年後に生きていたら手紙を書いてもらいます。すると感謝の手紙を5年後にかならずもらえます。恨みの手紙などは一通もありません。これはめざしの頭に効果があったわけでなく、癌患者一定数は自己免疫等で生き延びることがあるからです。一万人ぐらいの人に同じことをやってもらえればそのうち数百人は感謝してもらえます。残りの人は効果なかったなどと訴えません。死んでやかれて骨になっては手紙の書きようがないからです。治療の選択にはAとB、なにもしないを比べての比較検討が必須で、これがエビデンスと呼ばれているものです。

 しかし、感情はやっかいで、例えばカルビーのポテチと小池屋のポテチのどっちがいいかなんてエビデンスがあるわけではないです。治療法も有効であっても快、不快、不安、安心といった感情で人は選択肢を選びます。

 半ワクチンの人々も同様で基本的には感情で選択肢を選んでいます。エビデンスなんて関係ないです。「政府や製薬会社は信じられない」「自分の自己免疫は信じられる」「○○さんなら信じられる」といった信念にもとづいているのです。ポテチ選びだったらまったく問題ないのですが、薬選びであったらなかなか難しところです。

 本の選び方も同様で、

「価値観」「生き方」「考え方」などは、これはまったく好みで選んでください。正解なんてないです。

 「治療法」は、エビデンスを重視して選びましょう。

なにを読めばいいかわからない場合

 これはよくある図解系でいいと思います。刷や版をかさねているほうがよりわかりやすく人気があったものになります。参考文献が明示してあるものならなおよいでしょう。関心が高いものをより専門性が高いものに買い足せばいいと思います。

診断名がはっきりしている場合

 その診断で専門で治療をしている人が書いた本でエビデンスがはっきりしているものがいいと思います。多くの場合、第一の治療の選択はそれほど多くなくて悩まないと思いますが、それが無効であった場合は選択肢はやはり増えていきます。病態やケースについてわかりやすく解説していて、エビデンスの明示がしっかりしているものがいいでしょう。

治療法の選択肢で迷っている場合

 エビデンスの明示があるものがいいと思います。エキスパートコンセンサスガイドラインや、厚労省主幹のガイドラインは簡潔ですが優れた指標です。

 主治医に本を見せる

 勉強熱心で誠実な医師の場合、有用で最新の情報には基本的に飢えていると思います。主治医に本をみせて意見を聞くのも一つの手だと思います。読み合わせして意見交換かなにかできると治療もスムーズだと思います。

 自分が勉強熱心だとはおもわないですが、基本的に本は好きなので、読んでいる本は外来でぜひ教えてください!!

  • この記事を書いた人

モジャクマシャギー

 アラフォーの精神科勤務医です。自分の外来や診療が円滑になり、利用者さんの治療がスムーズになることを目標にブログを書き始めました。   ですが、いろんな方にもみてもらってやくにたてたら嬉しいです。  病棟業務を中心に児童から認知症、最近はインターネットゲーム依存まで幅広くみています

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