診療の合間によく、なぜ医者になったのかと聞かれることがあります。
真面目に答えようとすると複数の要因がありますが、外来だと時間が限られるので端的にいうと、フロイトの精神分析入門を読み、フロイトが医者だったからと答えています。たしか、中3か高1の時にこの本を読んでいたというとすごいビックリされるのですが、この本自体は大学で一般聴衆向けに話した内容がもとなのですごい平易なんですね。フロイト自体の理論には今では批判もあり間違いを指摘もされているんですが、私にとってはこの本は推理小説であり、冒険小説なんです。
無意識とか意識とかは今ではその言葉が普通にあるので説明も簡単なんですが、そんなことばがなく宗教的価値観や固定観念でがんじがらめの時代に、探求しみつけた事を先入観無くほりさげ、批判や攻撃にたえ、自分の意見を堂々と述べる姿は惚れ惚れします。まるで道無き道をいくような爽快さがあります。また、臨床を通じて仮説をたてそれを鋭い切り口で実証してみせる姿はもう名探偵さながらです。
記憶のなかで美化されているのもありますが、もう本当格好いいとスーパースターをみるような気持ちでこの本を読みました。
同い年の従兄弟にこの本の面白さをバスのなかで熱く語った日を今でも思い出せます。
精神分析自体は残念ながら、その道を究めるにもその恩恵を受けるにもコストがかかりすぎて(大学の指導教官がベンツ一台かかるといっていました。医者にスーパーバイズ(指導)をうけるので習得にべらぼうにお金かかるんですよね。)現在では斜陽を迎え、私の周辺でもやってらっしゃる先生は少ないですが、それでもなお、私のなかではフロイトは光り輝くスーパースターのままです。
その後の批判など色々ありますが、私の人生を変えた一冊であることは間違いないです。