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快感回路 報酬系についてのアカデミックな話。

 

 アカデミックな本について説明です。とはいっても、一般向けの本ですし、出版のされて10年近くたっているので古さはいなめません。快感回路といわれていますが、通常は報酬系という言い方をします。売るためにキャッチーな言い方をしたのだと思います。訳者後書きにもそのことに触れられています。

  ある程度の医学的知識が当然私にはあるので読みやすい部類に入るのですが、利用者向けとしてはやや難解な部類かなと思われます。

 ラットの実験やfMRIの研究結果を引用し、依存の本質に迫っていきます。この本が読めるレベルの方はおそらく依存をある程度、メタ認知できる方だと思うのでチャレンジする価値はあると思いますし、この本を読んでわからない部分を他の本で補えい理解にたどり付いたら報酬系のシステムと依存症の本質について理解が深まると思います。

 個人的に面白かったのは、耐性ができると期待する程の快楽を得る事ができないといった事実を神経学的に裏付けたくだりです。

 お腹減った後に食べ過ぎることのなんと多い事か。ゲームを面白くないとおもいつつついついやり過ぎることの、BBQで食材を買いすぎてそれで年々悪化していることが神経学的裏付けがあったんだなと思いました。

 こう言うのを読むと依存症系のビジネスって罪というか闇というかなんかこう脳の仕組みのバグを利用してやっている感じがいけすかないなと思いました。

 あとネコからみた人間のセックスのくだりは面白かったです。ただ、ジョークの質は人を選びますし、米国のネタが多くてちょっとつらいです。

 報酬系はかなり情報があつまっていますが、渇望に関してはやっぱりわからないですね。私の仮説ですが渇望は三種類あると思います。

  1. 身体的依存に対する行動。離脱症状を防ぐための学習をベースとした渇望。
  2. トリガー(刺激)に対する思考、行動選択の狭小化。行動選択の
  3. 無意識による行動選択。

 シナプスの接続は大きく二種類で興奮系と抑制系です。その接続を利用して渇望をモジュール化すると考えるとわりと無理があるんですよね。渇望系をオンオフする仕組みが必要で。血糖値や二酸化炭素、温度や光り、排卵などの月周期などはトリガーとしてわかりやすいので、渇望のメカニズムをシステム化しやすいと思います。

 ところが、アルコール依存症の方やインターネットゲーム依存症のかたを観察すると

「飲みたいと思わない」「したいと思わない」と入院した段階でわりとすぐにおっしゃるんです。でも、行動をみると再度その嗜癖行動をとるための戦略というか選択肢を直接的にも間接的にも選んでいる。

 となると”渇望”ってなに? って話になるのですね。 結論から言うと古い脳の活動は意識化にのぼらないつまり無意識でやることも多く。表にでてこないんです。快楽は意識の上に登ってわかりやすいのにですよ!!

 快感の回路はデザインしやすく、基本的に適切な刺激を与えていればネズミから人間まで、赤ちゃんから素敵なナイスミドルまでコントロールしやすいです。しかし、この渇望のデザインのなんと複雑で難解で冗長性が酷いことか。

 最近、ダイエットに成功して気がついたんですが、嗜癖行動のコントロールはけっきょくはこの渇望の向きと強さとコントロールにあると思います。置き換えといってもいい。

刺激→無意識の探索行動オンの刺激を探索するモジュール→探索行動オンの刺激→快感の探索行動モジュールオン→快感刺激発見→快感→探索行動モジュールを抑制     

 って感じです。このとき、渇望を感じるのは直前の探索行動の時だけでそれ以外は渇望を感じません。

 つまり、報酬系の抑制をするためには、本来、報酬系の刺激を入れるしかなく、我々がやれることは探索行動モジュールをいかに抑制するかということなんですが、そこは報酬系の仕組みを上手く利用(置き換え)するか、探索行動モジュールを賦活しないようにいくつもつながった無意識のカスケードをコントロールするいうミッションインポッシブルをやらないといけないんです。

 水の流れに例えると快楽は滝のようなものです。その力は不可逆で強い。かなり上流からコントロールしないと直前で流れをかえるぐらいだと厳しい。別の滝を作るぐらいでないと流れは変わらない。

 では、この渇望がデザインできるとしたら? 別のやる気スイッチができるのではないか?  

 最近、そのことを考えています。

 考えがまとまったらまたブログにあげていきます。

  • この記事を書いた人

モジャクマシャギー

 アラフォーの精神科勤務医です。自分の外来や診療が円滑になり、利用者さんの治療がスムーズになることを目標にブログを書き始めました。   ですが、いろんな方にもみてもらってやくにたてたら嬉しいです。  病棟業務を中心に児童から認知症、最近はインターネットゲーム依存まで幅広くみています

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