不安をコントロールするには?
三つの手順があります。私はみっつのフェイズにわけています。
- 悪循環をやめる。
- 恒常状態(カオス状態)を作る。
- 好循環を起こす。
それぞれ解説していきます。ここでは概論的に書いて、詳しくは、対人不安や全般性不安、など個別で書いていきます。
悪循環をやめる。
表題ですがわかっている人には簡単ですが、わからない人には難しい。でも自転車の乗り方と一緒です。練習すればできます。
余談ですが自転車の難しさってカウンターの当て方みたいです。これを知っているか知らないかだけでも世界が変わって見えます。
即効性はなく短期的には効果ないが長期的にはすごく効果があるもしくはデメリットがない手段もやる。
これができるだけでも世界が変わってみえますね。例えばリスカならリスカを辞めることに主眼をおかず、できればリスカをしたくなったらその前に腕立て10回とかしてリスカするみたいにパターンを変えます。
これは二つあってパターン介入と言う技法でいつものパターンに違う手順を入れただけで、結果が予想できなくなることを使います。
また長期的に不安を解消させてくれる運動を間に挟むことで不安の解消もやっていきます。
運動でなく自分にとってプラスになりドーパミンが出る行動だったらなんでもいいです。猫撫でるとか散歩とか計算のドリルをやるとかなんでもいいです。家事、パンを作るために小麦粉をこねるとか、日記をつけるとかなんでもいいです。
問題は習慣づけです。うつ病併発だったり衝動統制が取れなければ難しいですけど、深層心理の中で「病になることでバランスをとっている」のであればこれはできないです。
逆に言えば、ベースや併発の疾患がなく動機がしっかりしていれば必ずやれます。応援してます。
不安を人に相談する。嘘を言わない。支援者はありのまま受け入れる。
しゃべれないなら、文章であらかじめ書いてきましょう。苦手なら身振り手振りで。それもダメなら時間をかけてゆっくり理解し合いましょう。まずは相談する人は誰でもいいです。
いえないなならまずは雑談をしましょう。雑談が出来ないなら挨拶をしましょう。挨拶が出来ないなら目をあわせましょう。それもできないなら入院して顔を合わせる時間を多く作りましょう。それもダメなら取り敢えず生きましょう。
やれる範囲でいいのです。何かを人にわたせば世界は変わっていきます。
嘘に関しては反射的に言ってしまった後でもいいので修正してください。我々は正直なところ嘘に慣れすぎてそれ込みでアセスメントをしています。
人によって嘘をつく動機はさまざまです。取り繕いもあるし かっこつけもあるし、嘘と思ってない場合もある。入院したくない場合もあるでしょうし、自分では困っていないと思っている場合もあります。でもいずれにせよ、どんな状況にせよ、率直に生きることが道を切り開く場合が多いです。honesty is the best policy.です。正直者の頭に神宿るです。
私は表情に関しては衝動統制がとれないので嘘をつけないタイプの人間ですが、最終的にはそれでよかったと思います。残念ながらスパイにはなれなかったですけど。
こと精神科の治療においては嘘は本当に時間の無駄であると常々思います。
漠然とした不安をエネルギーにする。
これは、形而上的不安でもあります。具体的ではないので仕方ないです。望んでいないのにストーブに火が入っているとかそんな状態ですが、絶望することはありません。この漠然とした不安は、”ここではないどこかへ”人を突き動かすエネルギーともなります。芥川龍之介など作家はこれを抱えていました。ネガティブな面では自殺につながりましたが、ポジティブな面では素晴らしい作品群につながっています。呪いのようにも見えるし福音のようにもみえます。
つらいとは思いますが、これにもやはりパターンはあり、コントロール可能な部分はあります。詳しくは全般性不安障害でまとめていきます。
心の傷をのりこえ、本質と向き合う。
多くの場合、本質がみれないばあい、それに傷を負ってます。いじめや差別、区別、別れ、失敗、なにげない一言に心傷つきから明らかな軽蔑、様々なマウンティング、孤立、孤独、愛情の変化、嘘、悪意。それらに傷ついている事が多いです。心の傷は簡単にいえばある意味、知らないだけです。世界には別の側面があることを。友情や友愛、団結や出会い、成功、なにげない一言に心が救われ、尊重され、愛され、愛し、愛情は深まり、誠実さ、善意。それらをただ知るだけで世界の見え方がかわります。
多くの人が花が生えないと嘆くのは小さな種を見過ごし、小さな芽を踏みにじっているだけです。種がないなら一粒もらえばいい。
小さな事を大事に大事にする。それだけで世界は変わります。
精神科の治療の奥深さは、疾患部分の治療だけが治療ではないところです。ランニングをするときに、脚の動きだけでなく腕の振りが重要なように人生そのもの改善が治療につながっていることです。うつむいた顔をあげ空を見上げるだけで、人生がかわることもあるでしょう。
向き合うというと仰々しいですが、本質と向き合うということは、小さいものを大事にすることで初めてできることだと思います。
回避を回り道にかえる。
これもよくみます。社会的引きこもりの方で多い印象があります。社会的引きこもりといっても要因は様々で一緒くたにできないのですが、回避しかしなかった場合、当然何もできなくなります。この場合目標があるならそれに近づく一歩が必要になります。これをやるにはできるなら要因分析ーー不安の種類の把握と、強い動機づけが必要になることが多いです。
恒常状態(カオス)を作る
悪循環がおさまったら、次は恒常状態を作ります。というか世の中の情報の流れはほっとくとカオスになるので悪循環がなければランダムなパターンが生まれます。その程度は環境と本人のエネルギーに依存します。
この程度というのは、変化のスピードです。
基本これだけでも、治療は進みます。ランダムなパターンから自分に相応しい好循環のパターンをみつけ出すだけの作業なので“楽になりたいと願いさえすれば楽になることができる”はずです。
アルコールの人がお酒をやめている時に同窓会の手紙が届く。入院で暇だったから新しい趣味をやったり古い趣味をやり始める。仕事を変える。夫婦で会話が増えみえかたがかわる。
典型的にはそうですが、さまざまなパターンがあります。予想がつかないことが必ず起きます。
必ず起きると断言できるのは論理的根拠があって、そもそも予想できることは大体やっているかやれないかの2択です。人が変わるにはこのカオスから立ち上がる力強い芽が必要で生きている限りそれは起きます。空き地には必ず何か草が生えるのです。
不安に関していうと不安になった時にパターンでなくさまざまなことを試したり、不安にならないようにパターンを変える。回避だけなのを準備部分もする。悪循環から脱した段階でいろんな別パターンができているはずです。そのパターンを可能であれば他者と共有して最善のルートを模索します。
この辺は個別性が高く一概にこれがいいとはないです。
いいアイデアがない場合は必ず向こうから来ます。生きてもがいているうちにヒントはやってくるものです。
好循環を作る
さあここが本丸本番です。
空き地に茂った某某の草を美しい花畑に変えましょう。空き地に咲いた花で一番綺麗な花を選んでその種を植えていく。すると段々と花畑ができてくるでしょう。
三つのフェイズにわけてますが好循環は積極的に起こすことができます。
基本は振り子のように繰り返される小さな習慣です。挨拶や筋トレ掃除、読書などなんでもいいんです。不安のコントロールは小さな習慣によって可能になります。
不安になった時にやる習慣、不安になる前にやる習慣これがあなたを変えていきます。
若い方は未来の自分が変わるために、壮年の方はかつての自分を取り戻すために、老年の方は穏やかな最期の準備のために
人の動物的な部分=古い脳=不安を生み出す扁桃体はなかなかかえたり鍛えるというのは難しいです。
しかし、新しい脳=前頭葉=不安を制御する力、不安によって行動を決定する部分は鍛えたり学習したりすることはできますしこれはいくつになっても変化するものですし、根っこは習慣によるものなので知性を問いません。
ここまで読んで意味がわからないのなら、自分と似たような不安を抱えつつもコントロールしている方をみつけてその習慣やパターンを真似をすればいいだけです。
治療が進まないと嘆く方の多くがこのシンプルなことをやりません。口癖は
「いやでも先生、」「それはやりました」です。そして自分が持つパターンの中に埋没していきます。「わかりましたやります(やらない)」とその場ではいうパターンもあります。
どこかで“不幸はクセになる”と言うことを書いていきます。
愛される愛されないの不安なら人に小さな感謝をされる習慣がおすすめです。
不潔恐怖はシンプルに暴露反応妨害方がいいですし、未来に対する不安はマインドフルネスがおすすめです。
社会に対する不安なら人に対する習慣を変える。おすすめはありがとうの連鎖を狙うこと。
対人に関する不安ならシンプルなSST(ソーシャルスキルトレーニング)やパターン化された会話の学習、全般性の不安なら、目標を持ちそれに向かって少しずつ努力すること
恐怖症に関しては暴露反応妨害方など
PTSDに関しては単純性なら暴露法はおすすめですし
複雑性PTSDなら人と信頼関係を結ぶこと、体に対する現実感や信頼関係を取り戻すことなどなどあります。
これらのおすすめでなく、結局はトータルで不安だから損していると言う状態が問題なわけですから
勉強する
筋トレする
今ある人間関係を今以上に大事にする
家を掃除する
旅に出る
趣味を極める
等でも十分な治療になります。
また援助者はこの人はできないと言う思い込みを捨てないといけません。援助者が過剰に援助して新しい変化を阻害していることも多々あります。
同時に治療者は援助者の不安を取り除くこともできたらいいのですが、これは可能ならになります。通うだけで家族の不安が和らぐような雰囲気が大事なのですが、やりすぎると一人分のコストで二人分みることなって不公平になるし時間が押すので悩ましいところなんです。
上記の例をあげたのですが、これを循環はもっと小さくていいので
不安な時は問題を一問とく。教科書を1ページ読む
不安な時は腕立て10回
友達に手紙を書く
玄関の掃除をする
近所を散歩する 少しだけ遠出する。
趣味を少しだけする。
などでいいしもっと小さくできるならもっと小さい方がいいです。
分水嶺と同じで悪循環と好循環の境目はほんの少しの違いなんです。
パニック発作や解離などや各病気については個別に書いていきます。悪循環 好循環とその間については基本どの病気もありますし、不安を減らすのではなく利用することは不安障害の基本だと思いますのでここでまとめました。
不安というものをしり、対策を立て、行動をすれば不安は病気でなく才能であることに気がつくはずです。
そしてその才能はあなた次第なのです。